ドイツで差別はあるのか? 実際にドイツに住んでみて体験したこと

ドイツで差別はあるのか? 実際にドイツに住んでみて体験したこと

アメリカでは無抵抗の黒人アメリカ人が警察に射殺される事件が発生し、それから大規模な差別へのデモが発生しています。実際にドイツでは人種による差別はあるのでしょうか? ドイツ在住の日本人が体験したリアル・語学学校での出来事を中心にお伝えします

そもそも差別とはなんなのでしょう? 日本で生まれ育った私にとって差別はあまりピンとこない問題でした。しかし実際にドイツで暮らしてみて自分がマイノリティになってわかることがありました。
そもそも差別とは何なのでしょう?

差別とは?

外務省の人種差別撤廃条約によると差別の定義は以下のようになっています。

第1条
1 この条約において、「人種差別」とは、人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づくあらゆる区別、排除、制限又は優先であって、政治的、経済的、社会的、文化的その他のあらゆる公的生活の分野における平等の立場での人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを妨げ又は害する目的又は効果を有するものをいう。
引用元:外務省 人種差別撤廃条約

条約なので難しく聞こえますが、つまりは肌の色などの容姿で人間の基本的人権を妨げるものは差別です、ということみたいですね。

差別問題については正直書くかずっと迷っていました。差別問題はデリケートな問題で書き方が難しいのもありますしこれは差別だ! と主張するべきなのかわからなくて黙っていました。
「差別を受けたと書くとドイツを悪く思う人がいるかもしれない、差別じゃなくて区別だ、と言う人もいるだろうし、そもそも外国人としてドイツに住んでいる状態で差別について騒ぐのはなんか違うのかなぁ」など色々思うところがあってあえて書かないでいました。

でも日本で生まれ日本で育った身としては「やっぱり容姿で判断されて私は嫌な気持ちになっている…これって差別じゃない?」と思う体験はいくつかあったのが事実です。今回は実際に私が体験した差別についてご紹介ともしそんなことがあったら考えてみてほしいことをお伝えします。

それでもドイツはヨーロッパの中では差別はあまりない国と言われていますし、難民も沢山受け入れていたり、LGBTへの社会的受け入れなど他の諸外国に比べると他者との違いやマイノリティに寛容な国というのが客観的な意見だと思います。

でも本当にそうなのでしょうか?

ドイツはマイノリティに寛容???

これは若い世代はそうだと思いますが、やはり老年層は違うと思います。
実際に私は道端を歩いていただけなのですが、突然真向かいから歩いてきたおじいさんは歩くのをやめて私の方を見てきました。私は真っ黒な黒髪のロングヘアなのですがそれが珍しかったのでしょうか? なぜかはわかりませんが私とすれ違うまで歩くのをやめて見つめられ続けました。
「珍しくて妙な動物を見た!」かのような驚いた顔をされました。

私の住む町ではアジア人はそれなりにいますがそう多くはないので、なにか珍しかったのでしょう。このように見つめられる、珍しがられるというくらいなら電車の中でよくおきました。

語学学校の先生がつり目のポーズ/slanty eyes

私は語学学校でつり目のポーズを先生にされたことが2度あります。

このポーズを通じて容姿で人のことを笑うことは差別だとはじめて強く認識するようになりましたし、何が差別なのかを考えるきっかけになった出来事です。この出来事があって先生に抗議もしたので記憶に残っています。

語学学校の授業で昔受け持った中国人生徒の話を先生がしていた時のことです。
その授業では英語とドイツ語が入り混じるような授業でドイツ語で説明した後に生徒がわかっていなそうなら英語で先生が説明するという形式だったのですが、先生は中国人の人について語った後に
「中国人にしては身体ががっしりしてて目も細くなくて鼻も高かったのよ、普通のアジア人は目がこんなだけどね笑」(笑いながら つり目のポーズをしたところ、クラスは笑いがおきました)

私は笑えませんでした。同じアジア人としてつり目のような細い目として認識されていることはわかっていましたが、ただ容姿がそうなだけでクラス中笑うほどなのか、自分も同じアジア人でとても笑う気にはなれませんでした。そのときはこれが差別として抗議はしませんでした。

それから家に帰り、それぞれの手で目を引っ張ってつり目の真似をすることを「つり目のジェスチャー・つり目のポーズ(slanty eyes)」と言ってアジア人への蔑称であることを知り容姿で判断されて笑われるってこういうことなんだ、と初めて実感しました。

そしてブラジルやイタリアなどのスポーツ選手もつり目のポーズをしていて批判をあびたことがニュースになっていたことなどを知りました。

私は悩みました。最初は自分のことを笑われたわけじゃないし、と思って気にしないことにしました。

しかし数日後、先生はまたほかのアジアの話題のときにそのポーズをしました。授業には私意外にもアジア人がいます。先生から攻撃的な意図は感じなかったのですが、先生がアジア嫌いなことは感じていました。音楽の話で「アジアの音楽は嫌い、騒がしいから」とアジアの音楽を一括りにするようなちょっと偏った、暴論を吐くような先生だったと今思うと感じます。
そして2度もつり目のポーズをされたので先生なのにそういった差別的なことをするのはどうなのか? といったことを思いやっぱり主張しようと決意し話をしに行きました。

その時のことは今でも覚えていてすごく緊張しました。自分が気にしすぎなのかもしれない、とも何度も思いましたが授業で差別的といわれているつり目のポーズをされることで気分が悪くなっていたのは事実で、やはり先生に伝えたいと思ってそのポーズは差別的でアジア人への蔑称となっていてプロ選手がやって批判を浴びていることなどを伝えました。

先生は謝ってくれてその後はもうつり目のポーズをすることはありませんでした。

差別されたと感じたら主張しないと差別はなくならないのかもしれません。特に日本人は差別されたと感じても笑って流す人が多いと思いますが、嫌なら嫌と言うべきだし言わなければ同じことが起きると学んだのが、この語学学校での出来事でした。

つり目のポーズ と調べていたら出てきた記事です。
ドイツでつり目ジェスチャーをされたアジア人女性 その後の対応に素晴らしい

このように差別をしてくる人に悪意があろうとなかろうと、こちらが嫌な気分になったのなら主張すること。冷静に伝えること。そういったことの重要性を学んだ出来事でした。

つり目のポーズくらいで、と思う人もいるかもしれません。でもただ生まれてきた容姿で爆笑された空気には馬鹿にした空気を私は感じました。
私は嫌だったので主張しました。こういったことは考えておかないと私は最初のときのように言葉が出ませんでした。ただし、命の危険を感じるようなアメリカで話題になっているような黒人差別のようなことは私には起こりませんでした。実際に外国で自分がマイノリティな存在になって、差別についても考えるきっかけになりましたし、自分は肌の色や容姿で人を差別しないと決意しました。

外国で暮らすこと=マイノリティな存在になることはほとんどイコールです。またドイツ人にとっては中国人・韓国人・日本人の見分けはできないようです。なのでそういった国の出身と思われることもありました。今回のことで自分がマイノリティな存在になってはじめて肌の色や容姿で差別するのは良くない、と実感した出来事になりました。